交通事故事件

 自動車は便利である反面、危険な機械でもあります。交通事故が起きると、人間の健康、精神、財産に深刻な損害を及ぼします。交通事故の当事者の一方だけが損害を受けている場合もありますが、双方が損害を受けている場合もあります。このような損害を、交通事故の当事者の過失割合に応じて、分担する必要があります。

 よくいわれるように、交通事故は、民事、刑事、行政上の責任が問題になりますが、ここでは民事上の責任についてお話しします。

 

 交通事故の損害の分担は、相手方あるいは保険会社と交渉して決めることになりますが、見解の相違が埋まらければ、多くの場合、訴訟が提起されます。裁判所のなかには、交通事故の専門性をとらえて、交通事故を担当する部署が決められているところもあります。

 

 交通事故の損害賠償請求は、まず、不法行為に基づく損害賠償(民法709条)としてなされます。加害者が被用者であれば、使用者も使用者責任を負います(民法715条1項)。共同不法行為責任という規定もあります(民法719条)。自動車の所有者も、運行供用者責任を負います(自動車損害賠償法3条)。

 被害者が主張する損害には、治療費や入通院の交通費、破損した物の損害のほか、交通事故で怪我をして病院に通っている間の減収額(休業損害)、怪我をしたことによる精神的苦痛(入通院慰謝料)があります。

 怪我が完全に治癒しない場合は、就労可能期間までの減収分の逸失利益、後遺障害慰謝料なども請求されます。

 これらの損害があっても、被害者にも過失があれば、減額されます(民法722条1項)

 

 典型的な争点は、治療が必要なものなのか、休業損害の額、後遺障害の程度などです。これらが問題になる事件は、困難なものになります。

 いずれにしても、交通事故の被害者は、他人の不注意で健康を害し、貴重な時間を割かれ、強いストレスに苦しんでいることが多いです。 


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