相続事件(遺言あり)

 個人で保有していた財産は、死後もできる限りその個人の意思に従って、相続されるべきです。このような考えから、民法は遺言(法律上は「いごん」と読むのが一般です)制度を定め、自分の死後、財産を誰に渡すか、相続させるかを決めることを認めています(民法960条以下)。

 

 ただし、遺言は、重要な問題なので混乱を避けるため、法律上の条件を満たしたもののみ、有効とされています(民法960条)。また、遺言作成者の意思に基づいていない遺言も有効ではありません。

 民法は、遺言の形式として、複数のものを規定しており、代表的なものは、自筆証書遺言(民法967条)、公正証書遺言(民法969条)です。自筆証書遺言は、簡易な手続で作成できる反面、後に無効とされる危険があります。これに対し、公正証書遺言は、公証人等の関与が必要であり、手間がかかる反面、後に無効とされる危険はほぼありません。

 

 遺言の内容には、例えば、「〇〇町〇ー○○の土地は、Aに相続させる」「○○銀行の預金はBに相続させる」といったことが記載されます。

 

 遺言の内容は、基本的には、自分で自由に決められます。

 しかし、民法は遺留分という制度を定め、遺言で不利な扱いをされる者を保護しています(民法1028条以下)。遺留分は、一定の相続財産の割合です(民法1028条)。遺言によって、この割合すら相続できなくなってしまう人は、遺留分が確保できる限度まで、遺言の効力を失わせることができます(民法1031条)。

 

 遺言がある場合の紛争は、遺言の有効性が争い(法律上の条件を満たしていない、亡くなった方の意思を反映していないというという争い)、遺留分の範囲などが争いになります。遺留分を決める前提として、相続財産の評価なども争いになります。

 親族同士の争いであるため、大変感情的な争いになることが多いです。

 

 調停、審判によって、争いを解決します。場合によっては民事訴訟も必要になります。なお、遺言が無効とされた場合は、相続事件(遺言なし)をご参照ください。 


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